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落ち着いてからでもいい。ダイヤモンド・プリンセス号の中を見た人は、第三者が頭の中で船内を描画できるような情報を教えてほしい。

序文: 岩田健太郎氏のブログへの感想を書いていましたが、それについては筆を折ります

この記事は、COVID-19に関する記事です。…たぶん。

なんかひどい医師がいるらしい。例のクルーズ船の感染管理について、YouTubeかなんかであーだこーだ言っているそうだ。科学的な話は批判を受けてナンボなのに、動画という検証しづらい媒体で情報発信するなよ。論文とは言わないけど、せめてブログかなんかで書けよ。…ってブログあるじゃん。動画と同じことは書いてないけど。

そのブログを斜め読みしてみたら、案外まともなこと書いてるじゃないですか。せっかくなので、いくつか記事をマストドンに貼ろうとしたら…文字数オーバーでした。URLが長すぎるんじゃい。

そこでこのサイトに載せようとしたわけです。せっかくなので適当に感想を付けて。それが仇となり、いつまで経っても書き終わらないのです。というか掘り下げるリソースが足りない

COVID-19はマスメディアが今一番注力していることで、関心を持つ人も多いと思う。岩田健太郎氏もなんかバズってそうだし、こちらも関心を持つ人は多いと思う。

要は、「私が書かなくても誰か書くでしょ」ってことです。岩田氏のブログへの感想については、これ以上書かないことにしました。公開もしません。…たぶん。

一方、最低限言っておきたいことはあります。ごくありふれた、当たり前の話ではあるはずですが、ここに書き記すことにします。

岩田氏へのインタビュー

岩田健太郎氏は、BuzzFeed Japanの電話取材に応じた。その中から、ダイヤモンド・プリンセス号のレッド、グリーンゾーンの区分けについて取り上げる。

まずは船内の本部に行きました。

ーーそこは、感染のリスクがないグリーンゾーンになっていたのですか?

全然グリーンではありません。グリーンというのは要するに、完全にウイルスがないところでなくてはいけないのですけれども、そこにPPEを着た人がどんどん入ってくるのです。

PPEというのは、PPEを着ているから感染が起きないのではなくて、レッドゾーンの中でPPEをきちんと着ているからウイルスに晒されないで済むわけです。しかし、PPEそのものにはウイルスはついているかもしれません。

ですからグリーンゾーンに入る前に必ずきちんと脱がなければいけないんです。ところがそれを脱がずに入ってきているので、ウイルス持ち込み自由になっているんです(苦笑)。

(中略)

僕はPPEを着ませんでした。「レッドゾーン」とされているところに行かなかったからです。

(中略)

しかし、実際には、クルーの方や患者さんとおぼしき方がそこを歩き回っていて、そこも完全にレッドゾーンだったのです。みんなグリーンだと思い込んでいるところが真っ赤かでした。

だから、僕は自分も感染するのではないかと思って、衝撃を受けたんです。

例えば、本部の1階下がメディカルルーム(医務室)だったのですが、昨日は藤田医科大学への搬送で忙しそうでした。その医務室の前に患者さんが集まって、PPEを着た自衛隊の方たちと並んでいました。そこは本来、レッドでなければならないのですが、グリーンとされていました。

(中略)

たまたまたくさんの人とすれ違った時に、「この人たちは誰ですか?」と聞いたら、「今から連れて行く感染者の人です」と言われて、驚いたのです。

検疫所の人と一緒に歩いていた時も、搬送する患者さんのすぐそばを通っていて、検疫所の人が苦笑いしながら「今患者さんたちとすれ違っちゃいましたね」と言っているぐらい、のんびりとした空気でした。

これは感染症のプロが見たら、悶絶するぐらいの恐ろしいことです。

うん…まあ…これ読んだら私も衝撃を受けますよ。ここは安全と言われた1場所に、感染していることがはっきり判っている人が居たのだと。そして現場はその状況を何とも思っていないのだと。岩田氏は感想を交えつつ、船内の様子について具体的に語っている。なので第三者の私でも、船内の映像がそれなりに想像できる。それを以て、「頑張りが足りない」と言える。

一方で、これは岩田氏一人から得た印象なわけです。他の人であれば、映像的部分について、また違った表現をするかもしれない。それこそ意思決定をしている人たちなんかは、何かしら反論をしたいかもしれない。

厚生労働省の発表

とりあえず、厚生労働省の文書も見てみましょう。

1 船内の区域管理(ゾーニング)など、感染管理について

船内の区域管理(ゾーニング)が適切に実施(※)されているかを含め、船内の感染管理について、感染制御支援チームの医師が船内のコンサルテーション及びラウンドを連日実施し、指摘された点はすべてその日のうちに対応を行ってきました。
(※)検体採取等で汚染したガウン等の感染防具を脱ぐゾーンは設けられ、その他の業務区域と明確に分離されています。

困った。感染防具を脱ぐゾーンは分離されているらしいが、他の個所についてきちんと区分けされているのかが書かれていない。

例えば、検査のために保護具を着用し、客室に立ち入り、乗客に接触したとする。これにより、保護具は汚染される(ものと思わないといけない)2。汚染された保護具で廊下に出れば、今度は廊下が汚染される。廊下はレッドゾーンとしなければならない。あるいは、(勘弁してほしいが)乗客に直接医務室に出向いてもらっていたとする。乗客の飛沫で客室は汚染されている。汚染された部屋に居たら衣服や体は汚染される。保護具を着用したところで、着用した瞬間に汚染される。そんな状態で出歩かれたら、客室から医務室への経路は汚染される。やはりレッドゾーンとしなければならない。

そもそも、感染防具を脱ぐゾーンは設けられ、その他の業務区域と明確に分離されていますというのも具体性に欠ける3。床にテープでも貼ってきちんと区分けしている様子も勝手に想像できる4。一方で、適当に貼り紙でも貼ってブースの左側は清潔、右側は不潔と分けている様子も勝手に想像できる。

「当たり前のことを、当たり前にやっていますよ」という情報が、厚労省や感染研の発する情報に含まれてないんですよ5。お願いだから岩田氏の言ったことを否定してみせてください。「適切に行っている」などという主張じゃなくて、「こういった方法を取りました」と、船内の様子を具体的に教えてください。それが本当に適切であったなら、評価は後から付いてきます。

言いたいこと: 議論が有効に機能するためには、正確で詳細な情報が必要

さて、今まで書いたことは、この主張の説得力を高めるための前置きでしかありません。

船内に入っていない第三者が、隔離が適切であったかを判断できるだけの情報が足りていない。現状はそう言わざるを得ません。そのような中で議論を行おうとしても、まともに行えるわけがありません。ダイヤモンド・プリンセス号の中を見た人は、その様子を事細かに伝えていただきたいのです。落ち着いてからでも構いません。それは政府の対応が適切であったかを考え、万が一不適切であった場合には、同じことを繰り返さないための貴重な情報になります。

付言: 船員が仕事しなきゃならない状況は、なるべく早く解消すべきだったのでは

注意: この条は、船員に対して適切な保護具が適切に供給されていたと仮定して執筆した。

記事を推敲していたら、大変なことに気がついた。船員が保護具を脱ぐ場所が恐らく無いのである。

船員は配膳などに従事していたはずで、つまりレッドゾーンに立ち入る。その際は保護具を着用していたはずだ。しかし保護具を脱いだ後、グリーンゾーンに立ち入ることはできない。船員は隔離対象者でもあるからだ。

そこで、他の人から見たらレッドゾーンでありつつ、船員から見たらグリーンゾーンになる場所が必要だ。それも船員個々人に。というのも、この仮想的なグリーンゾーンを他の船員と共有していたら、船員同士を(必ずしも濃厚とまでは言わないが)接触させていることになる。このうち一人に感染が発覚したとしよう。他の船員はどうなるだろうか。移ってないと言い切れるのだろうか。

居住区画が広いとは言えない船の中、仮想的なグリーンゾーンはおいそれと用意できないはずだ。何せその手前には、保護具を脱ぐための場所も必要になるのだから。このような制約がある中、船員にいつまでも仕事をさせるというのは、船員の感染リスクを高めるのではないか。隔離初期は仕方ないにせよ、船員を純粋な隔離対象とすべく、早急に行動すべきだったのではないだろうか。

脚注

  1. いや、仮に安全だと言われてなかったと仮定しましょう。何せこれは岩田氏が一方的に言っていることです。岩田氏がPPEを着用せず、勝手にレッドゾーンに入っていってしまったと仮定しましょう。一目見てゾーンが判別できない状況、それこそゾーニングの不備でしょう。 

  2. 床にテープを貼って区分けしたところで保護具を脱ぎ、最後に靴を脱いでグリーンゾーンにひょいと移動する。というのを勝手に想像してみた。が、アメリカCDCの動画を見ると、ブースといい脱ぎ方といい想像とはかなり違っていた。このガイダンスはエボラ出血熱のものではあるが、参考にはなるはず。というか靴の消毒が案外雑だったのには衝撃を受けた。 

  3. 私が見落としているだけかもしれませんが。